表札を手作りしてみた

出来上が上部斜め

母親が介護施設にお世話になることになり、個室なので「名前を書いて下さい」と表札用の板を渡されました。筆やマジックで書くには字が下手なのでどうしようかと思いネットで調べたら、手作り表札の良い手本がありました。私もやってみました。

技法を決める

ネットで検索すると手作りでもPOPな感じが多く、私が求める伝統的な感じの手作り例はほとんど有りませんでした。一番参考になったのは

[DIY, 日々之戯言] 自分で作ってみた|手作り表札 -スグラボ-

で、非常にすばらしい出来映えです。

基本的なやり方は、PCで印刷した文字を板に転写し、彫刻刀で彫って墨入れするものです。いろいろなやり方を試す余裕は無く一発勝負なので、私もほぼそのまま真似てやってみることにしました。

文字を彫刻する場合、どこを彫るかで次の4つに分類できます。

  1. 文字の部分を彫る(墓石のような感じです)
  2. 文字だけを残し、他を一段低く彫る(大きなハンコのような感じ)
  3. 文字の輪郭とその外側周辺を彫る
  4. 文字の輪郭とその内側周辺を彫る

今回は、参考例と同じく彫る手間が少なくて文字に立体感が出る4の方法で行います。

主な材料・用具

表札用の板

施設から渡されたもので、裏には取付用の金具がついた穴がありました。

取付穴の金具

裏の取付穴に金具がついています

表札用板材

板には既に上下にマーキングしている

彫刻刀

彫刻刀昔学校で使った物が有ったはずなんですが探しても見あたらず、ホームセンターで買ってきました。私は平刃と切出し刀しか使いませんでしたので、最低限この2本でいけます。

後で考えると刃先が減った古い物を使うより、新しい物を使う方が切れ味の良く綺麗に仕上がります。古い物があるなら刃を研いでも良いでしょう。

との粉

との粉「との粉」は木製品の塗装前に木肌を整えるのによく使われ、金属の塗装におけるパテのような役割です。

だいぶ昔(おそらく20年以上前)に買って残っていた物が見つかりました。変質もなくそのまま使えそうです。

墨汁と筆

墨汁筆義父が使っていた物です。

もし、筆字の得意な義父が生きていてくれたら直接筆で書いてくれたでしょうに。

ニス

スプレーニススプレー方式のものをホームセンターで買いました。

透明のものと着色する物があり、今回は白木だったので、着色系にします。色は薄めのゴールデンオークを選びました。

製作手順

1.原稿作成

1-1 フォントの用意

なにか良い筆文字フォントがないかとネットを探しましたが、無料でかっこいいフォントはありませんでした。

結局、年賀状に使っている「HGP行書体」を使いました。

1-2 印刷して文字サイズ、バランスを検討

パソコンでMS-Wordを使いました。A4横の用紙に縦書きで文字を並べると3~4行書けます。字の大きさや間隔、苗字と名前の間隔など候補をいくつか印刷して、板と文字と空白のバランスを検討します。

印刷する原稿が決まったら、文字の中心に縦線を入れて印刷します。縦線は貼付時の位置決めに使います。

2.文字を板へ転写する

2-1 紙を板より少し小さく切る

位置合わせがし易いように、印刷した紙を板より少し小さく切ります。

2-2 文字の裏を鉛筆で塗る
裏に鉛筆で

文字の裏を塗る

転写するために文字の裏側に転写剤が必要です。刺繍用の転写シートやカーボン紙でも良いのですが持っていないので、一番簡単な鉛筆を使いました。

手持ちの中で一番濃い2Bの鉛筆で、文字の部分を塗ります。転写するのは文字の輪郭なのでその部分が含まれるように広めに塗ります。

2-3 板に貼り付ける
原稿の貼り付け

紙を貼り付けた

板の上下に中心をマーキングし、原稿の中心線と合わします。これにより文字の傾きや左右中心位置が正確に配置できます。上下の位置は目分量です。

貼り付けにはセロテープを使いました

2-4 文字の輪郭をなぞって転写する
移った輪郭

転写された様子

原稿の上から鉛筆で文字の輪郭を丁寧になぞります。

紙を取ると右のように薄く転写されています。

2-5 輪郭をはっきり書く
輪郭をなぞる

線をなぞって濃くした

転写された線は薄くてそのままだと消えてしまう恐れがあるので、もう一度鉛筆でなぞって書き、線を濃くはっきりさせます。

3.彫刻

彫り方
彫刻途中

平刀で斜めに切り取る

最初に切出し刀(斜刃の刀)で輪郭線部に垂直に切り込みを入れます。次に平刀で文字の内側を斜めに削り取ります。

削り取る幅は文字の大きさとのバランスで決めますが、文字幅の太い所の1~2割程度が良いと思います。

最初は小さめに彫った方が良いです。追加で深く掘れますが、彫りすぎてしまったら戻せないからです。曲線部分や角は少し難しいですが、丁寧に行います。

彫刻

一文字目の彫り上がり

私は上の文字から彫り始めたのですが、広く削りすぎました。2文字目からは慣れて比較的上手にできました。この反省から言うと、捨て材で練習彫りするか、ぶっつけ本番の時は、最初2番目以降の簡単な文字を彫って慣れてから一番眼がいく最初の文字を彫った方が良いでしょう。

4.表面処理

4-1 やすりがけで表面を滑らかにする

表面、角、木口(上下の面)をサンドペーパーなどで磨きます。私は電動サンダーを使いました。

  • 木口は細かく凸凹していることが多いです
    上下になるところですが、気になる人は丁寧に磨きます
  • 板の角に丸みを持たせると暖かい感じになります
4-2 との粉を塗る

との粉を水で溶きますが、溶ける範囲で水は少なめにした方が乾燥が早いです。

文字部分の凹みに刷毛で塗りますが、文字の部分を完全に埋めるのでなく、段・谷を浅くする感じで段差を残します。

少し乾かして布で余分なとの粉を拭き取り、空気穴などが残った時は追加して塗ります。墨入れしたら多少凸凹でも目立ちませんので、細かいところは眼をつむります。

板の傷(凹んでいる部分)や木口にも「との粉」を塗ります。こちらは凹みが無いようにします。

4-3 乾燥

半日程度置いて乾いたら、表面をペーパーがけして余分なとの粉を落として平滑にします。

本来は平滑度が足りないなら追加でとの粉を塗り、満足がいくまで繰り返すのですが、細かいところはそれほど気にしなくても良いです。(^_^;)

5.墨入れ

ここまでできたらいよいよ墨入れです。

私は習字用の小筆と墨汁を使いました。まず中心部に試し塗りして様子を見、次に周辺際を慎重に塗っていきます。

墨入れ

最初は試しに中を塗る

墨入仕上がり2

一文字目の墨入れ完了

6.表面塗装

6-1 ニスを塗る

墨が乾くのを待ってニスを塗ります。

用意しておいた着色スプレーニスを使います。筒状の缶の上に載せて、裏以外の全ての面を塗りました。

スプレー塗料は平行に流すように塗ります。一度目は薄めに塗り(スプレーを早めに動かす)様子を見て重ね塗りします。

6-2 乾燥

乾燥時間ラッカーと比べるとニスは乾燥が遅いです。

右のように乾燥時間の表示がありますが、半日経過しても、触ると粘つく感じがします。

また、「塗り重ねは1~2日後」になっていますが、粘つきが無くなる時間だと思います。

7.出来上がり

出来上が上部2出来上がってみると、簡単なわりに文字がふくらんで立体的に見えて良いです。
♪(゚▽゚*)

右の写真では輪郭に白い部分が目立ち、拡大してみるとアラが見えますが、実物は全然気になりません。

出来上がり全体

右は板全体の様子ですが、全体の仕上がりも悪くない? (^。^;)

着色の色合いや濃さも丁度良く、ニスの光沢があります。

木口も「との粉」の効果で完璧では有りませんが滑らかです。

出来上がりを持って行くと母が喜んでくれましたが、施設の人からは「業者に出したの?」って言われました。

彫刻以外の方法

彫らないでそのまま描く場合

彫るのはやはり少し手間がかかりますから、もっと簡便で字が上手に見えるにはどうすればよいかというアイデアです。

まず、今回の手本字の転写までの作業を行います。次に墨で本番の字を、次の1または2の方法で描くのです。

  1. 手本を真似て筆で書く
    字はバランスですので、直接自分で書くより格段に綺麗に見えると思います。手本のフォントは楷書の方が毛筆が得意でない人には描きやすいでしょう。
  2. 習字のように字を書くのではなく、イラストのように墨入れする
    手本の輪郭を下絵として、イラストの墨入れのように丁寧に文字部を塗りつぶします。

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