バイクの改造 (1)エンジンのボアアップ

リトルカブ

先頃、息子からバイク(ホンダのリトルカブ)の改造をしたいので手伝って欲しいと頼まれ、付き合うことになりました。
最初はエンジンのボアアップだけと聞いていたのですが、結局はタイヤ、チェーン、マフラー、カムシャフト等も交換しました。参考になりそうなことを重点に紹介します。(ポイントと思った事項は文字の色を変えています)

今回はまずエンジンのボアアップです。それ以外も追って記事にする予定です。

【追記】分解時ピストンを圧縮上死点に合わすように記述を追加しました。(2015/12/30)

はじめに

バイク

バイクはホンダ製リトルカブC50、エンジン排気量50cc、99年製造の古いものです。

ホンダのカブは実用バイクとして歴史的ベストセラーであり、今でも特に途上国で絶大な人気があります。リトルカブは、タイヤ径が17インチのスーパーカブに比べ14インチと小さく、小柄な人でも扱い易いタイプ。ほとんど海外生産になってしまったカブシリーズで唯一日本で生産されているそうです。

改造したいこと

  • エンジンのボアアップ
    50ccだと制限時速が30kmで交通の流れについて行けない。75ccに排気量を上げて制限時速を緩和し、60kmで走れるように馬力も上げる。
  • マフラー修理
    マフラーに穴が空いているのか、エンジン近くで排気ガスが漏れて音が大きいのを修理する
  • その他部品交換
    タイヤ、チェーン、ブレーキパッド等の摩耗・老朽化部品の交換
改造前エンジン部とマフラー

改造前のエンジン部

改造作業時のノウハウなど

作業はバイクを台に乗せ高くする

エンジンなどは下部についているので、高くすると作業がやりやすい。専用のスタンドも有りますが、これっきりなので下の写真のように木片などで台にしました。

バイクを高くする

作業中のバイク。台に乗せて高くしている

分解した部品を入れる箱を多めに用意する

分解した部品をなくさないように箱に入れておきます。分解した場所ごとに箱を用意すると、どのボルトやワッシャーを使えば良いのかわかりやすいです。

私は菓子箱を多数用意しました。

写真を撮る

要所で写真を撮っておきます。人間の記憶はあやふやなものです。後でどうだったかわからなくなったとき、写真が助けになります。

エンジンのボアアップ

ボアアップとは

エンジンの排気量を増加してトルクや馬力を上げる手段です。ストローク(シリンダーの行程)はそのままで、シリンダのボア(穴径)を大きくすることで排気量を増加するもので、基本的にはシリンダーとピストンを交換するだけでよく、交換部品が少なくて済みます。

改造キットが売られている

私は知りませんでしたが、改造用キットがネットで売られています。右は今回息子が購入したキタコという会社のボアアップキットで、シリンダ、ピストン、ガスケットなど一式のキットです。

これは12V車用ですが、同シリーズで6V用がありますので、どちらかバイクに合った方を選びます。

キット会社のマニュアル

同じメーカーが出している右のマニュアルも同時購入しました。今回のように標準的な交換であればキットについてくる説明書とネットの情報で事足りるように思います。

実際マニュアルはカブ・モンキーの各種のタイプについて併記してあるので、どれを見たらよいのかわかりにくく、ほとんど見ませんでした。

キットの説明書は字が大変小さくて老眼の私には見づらく、パソコンで拡大コピーして準備しました。マニュアルも字が小さいです。

後はわからないことが出てきた時に息子がスマホでネットの情報を調べました。

取り外しの準備(外装、オイル、ガソリン)

天気の良い日に、11時ごろからの作業開始になりました。

外装を外す

エンジン周りの外装を外します。タイヤホイールはそのままです。

外した外装部品

外した外装部品等。外した部品は、同じ箇所のものをまとめて箱に入れておく

エンジンオイルを抜く

ボルトにはワッシャーがありますのでなくさないようにします。

台に乗せる

エンジンオイルを抜いている所

キャブに残っているガソリンを抜く

燃料コックを閉め、コックの下方にあるマイナスのビスを左に回すとゴムホースからガソリンが出てきます。たいした量ではないですが、ロートで受けて再利用しました。
抜き終わったら忘れないようにビスを締め付けておきます。

分解

マフラーとプラグを外す

マフラーと点火プラグを外した

マフラーと点火プラグを外した

プラグ

プラグを外すには深いボックス型レンチが必要ですが、私は農機用がサイズが合ったので使いました。

マフラー

マフラーに穴が空いているのかと思いきや、取り外してみると根本が折れ、フランジと分離していた。これは交換が必要ですが、今日は取り敢えず応急修理することにし、昼食ついでにカーショップでマフラー補修用パテを購入しました。

シリンダーとシリンダヘッドの取り外し

クランクケースカバーを外す

左側にあるチェンジペダルを外し、ジェネレーターカバーを四カ所のボルトを緩めて外します。ボルトの長さが場所により違います。

エンジン左カバーを外した

ジェネレータカバーを外したところ。シリンダ部分がずいぶん錆びています。

シリンダヘッドの左サイドカバーを外す

反対側からとめている長いボルトを緩めてカバーを取ります。開口部にカムスプロケット(歯車)とカムチェーンが見えます。

ピストンを圧縮上死点に合わす

これからの作業ではピストンの位置を上死点に合わしておくことが基本です。下の写真のようにフライホールのTと表示のある線とクランクケースの切り欠きを合わせます。点火プラグがついている状態だと上死点付近は圧縮が高くなり合わせにくいでので、プラグを抜いておくわけです。

ピストンの上死点

Tマークの線と切り欠きを合わす

カムチェーンの合わせ方

圧縮上死点に合わす

注意

このとき右図のようにカムスプロケットの○印が左に来ること。

右に来た場合は排気上死点なので、フライホールをもう一回転するとカムスプロケットが半回転し、圧縮上死点になります。

このように圧縮上死点にしておくのは、カムシャフトの回転位置を、組み込みの時のため合わしておくものです。ですので今後再組み込みまでシリンダヘッドのカムシャフトをむやみに回転してはいけません。

カムスプロケットを外す
  1. 前図の説明にある、カムチェーンテンショナーを緩めるボルトを外す
  2. カムスプロケットを固定している2本のボルトを外して、ラジオペンチなどを使ってカムスプロケットを取り出す
シリンダヘッドを外す

説明書どおりナット類を外し、少し力を入れて引っ張るとシリンダヘッドが抜けました。

シリンダを抜いた状態

シリンダヘッドを抜いた状態

取り外したシリンダーヘッド

取り外したシリンダーヘッド、ガスケットなど

シリンダーを外す

続いてシリンダーを抜き取ります。下の写真のようにピストンがシリンダーから抜けて残ります。

シリンダを外した状態のピストン

クランクシャフトとピストンが出てきた

ピストンを外す

クランクシャフトからピストンを外す

シリンダはピストンピンというパイプ(筒状)でクランクシャフトに固定されています。更にピストンピンが抜けないようにピストンにクリップがはまっています。

ピストンピンの外し方

ピストンのクリップ装着部の欠け部分で、溝にはまっているリング状のクリップをラジオペンチで掴み、回転移動して、クリップの端が見えるまで移動します。ラジオペンチで端を掴んで内側に引っ張るようにして外します。

クリップは左右についていますが、どちらかを外せば、その方向にピストンピンが抜け、ピストンを取り出せます。

ピストンを取り出したクランクケースの穴にはウエス(布)を詰めて埃が入らないようにしておきます。

下は取り出したシリンダーとピストンです。

取り外したシリンダー、ピストン

取り外したシリンダーとピストン

組み立て

ピストンにリング部品を取り付ける

キットは、ピストンとは別にピストンリングが複数あり、自分ではめ込まなければなりません。

説明書には、リングをはめる順序とリングの隙間の位置指定があり、そのようにしましたが使っている内に回転してずれないのかな?という疑問は持ちました。

新しいシリンダ

リングを組み込んだピストン

組あがったピストンにはエンジンオイルを塗っておきます。

片方のピストンピンを取り付け

ピストンピン用穴の両側の溝にピンクリップを取り付けますが、まず作業がし易いうちに一個取り付けます。

ピストンピンクリップのはめ方

ピストンピンクリップをはめるコツところがピンクリップをはめるのがはコツがいるらしく、説明書にも右のように書いてあります。

実際説明書のとおり、片方の端を溝にはめ込み、他方をラジオペンチでつかんで押し込もうとすると、ピンクリップが回転してクリップ装着部の欠け部分から位置がずれ、いくらやってもうまく行きませんでした。

で、私が最終的にたどり着いた方法は、ピンクリップの隙間をクリップ装着部の欠け部分に合わせ、まず反対側を溝に押し込んで指で押さえながら、続いてクリップの両端を一つずつラジオペンチでつかんで溝にはめ込むのです。

ピストンの取り付け

ピストン、ピストンピンにはオイルを塗っておきます。

クランクシャフトにピストンを被せ、クリップをはめていない方からピストンピンを挿入して両者を固定します。更にピストンピンピンクリップで固定します。クリップのはめ方のコツは上記の通りです。

ピストンを取り付けた

新しいピストンを取り付け、ガスケットもはめ込んだ状態

シリンダとシリンダヘッドの取り付け

シリンダーの取り付け

シリンダーに予めオイルを塗っておきます。

クランクケースから突き出ている4本の長いネジ棒に、始めにガスケット、次にシリンダーを通してピストンの近くまで進めます。ここでピストンをシリンダーに入れます。最初入りずらかったのですが、ゴニョゴニョしていたら入りました。

ピストンの頭が入ったらチェーンをシリンダの角穴から引き出しながらクランク部に当たるまでシリンダを移動します。

シリンダを取り付けた1

シリンダを取り付け、ガスケットも付けた状態

シリンダ固定ボルトの仮締め

上の写真に見えていますが、シリンダの横側にクランクケースに止める「シリンダー固定ボルト(ノーマルボルト)」を仮締めします。(後だと入らないことがあります)

シリンダヘッドの取り付け

チェーンを奥に入れてしまわないように注意しながら、ガスケットを挟んでシリンダヘッド部も入れ、横にある「シリンダーヘッド固定ボルト」を仮締めします。

シリンダヘッドを取り付けた

カムチェーンの取り付け

カムスプロケットをシリンダヘッド内に入れる

チェーンを引き出し、輪を作ってその中にスプロケットを入れます。カムチェーンカムスプロケット(歯車)にはめる時はバルブタイミングが合うようにしなければなりませんので、仮にチェーンがかかった状態にします

バルブタイミングを合わせる
カムチェーンの合わせ方

カムチェーンの合わせ方(前記圧縮上死点の再掲)

ピストンが上死点の状態で、右の説明書のようになるように、チェーンの噛み込みを合わします。

本当に合っているかわかりにくいので、一個余分にずらしてみて最適点であることを確認しました。

スプロケットを嵌めて固定する

カムスプロケットにピンを通し、カム軸に嵌める。カムチェーンはバネでテンションがかかっていますので、チェーンを引っ張りながら嵌めました。

私は作業中気がつきませんでしたが、テンションを緩めるボルトがあると説明書にありました。(上図の右下部分) チェーンのテンションを緩めれば簡単にスプロケットを嵌めることができ、その後チェーンの噛み込みを合わすことができると思います。

以上が終われば、カムチェーンテンショナーのボルトを締めてチェーンを張っておきます。

シリンダヘッドのサイドカバーを取り付けて蓋をする

シリンダヘッドの左サイドカバーを、反対側から長いボルトで固定します。

ボアアップ完了左

シリンダヘッドを取り付けボアアップが完了したエンジン

今回はバルブタイミングやキャブ関係は変更しませんので、エンジンのボアアップの行程は一応完了です。

クランクケースのカバーとギアチェンジペダルを取り付け、各ボルトの締め付けを確認します。

マフラーと点火プラグを取り付け

マフラーの応急修理

日が暗くなってきたので、先にマフラーの応急修理をすることにしました。パテの乾燥に時間がかかるからです。

マフラーを元通り取り付け、隙間をマフラー補修用のパテで塞ぎました。翌朝までにある程度乾燥を期待です。この日の作業はここまでで終了としました。

ボアアップ完了右

ボアアップ後右側から見たエンジン。マフラーの付け根をパテで補修している(翌日撮影)

エンジン始動確認

翌朝、いよいよ動作確認をします。

エンジンオイルを入れる

4サイクルエンジン用オイルを規定量入れます。

ガソリンのコックを開ける

キットの説明書ではハイオクガソリン推奨だが、圧縮率が上がった訳では無くノーマルガソリンでいけると見込んで従来どおりノーマルを使います。ガソリンを抜いたときのビスの閉め忘れが無いことを確認してコックを開けます。

エンジン始動

何回かキックしてガソリンが回ると始動した。異音もなく成功のようだ。\(^▽^)/
その後オイル漏れも無く、エンジンは順調に動いています。

マフラーは排気漏れが収まっておらず、やはり交換が必要です。

あと、エンジン始動時のキックが重くなりました。女性ユーザーにはディメリットになるかもしれません。

排気量変更登録

排気量が50ccから75ccに増加すると、原付一種から二種に登録変更が必要になります。

登録手続きは都道府県によって厳しさが違うようで、排気量を増加させたかを確認するため「ボアアップキットの購入証明」が必要だったりする所もあるらしい。当地方は登録申請書類の提出だけで済んだと後日息子が言っていました。

ボアアップを終えて

成功してみればボアアップは意外と簡単だったという印象です。素人にもこういうことができる世の中になったのですね。

息子は調子に乗っちゃって「エンジンが調子いいので他の部品も交換して長く乗りたい」と言いだし、この後マフラーだけでなく次々と改造(部品交換)をすることになりました。別途紹介予定です。

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

トップへ戻る