最近のマキタの電動工具用のバッテリーは、3~4段階ぐらいの残量表示が付いていますが、以前から持っているバッテリーは表示がありません。そこでライト付きUSBアダプタに残量を%表示する電圧計を取り付ける改造を行いました。
【追記】加工動画を追加しました。(2022年7月2日)
制作の動機
ユーチューブ動画などで、マキタバッテリー用のライト付きUSBアダプタが紹介されています。これに残容量計をつけるとさらに便利になります。実際そうされている方もおられました。
私が見たユーチューブの改造動画ではUSB電源を殺して代わりに残量計をつけるものでしたが、今回はライトとUSBの機能を生かしたまま残容量計を付けたいと思います。
素材
マキタバッテリー用USBアダプタ
マキタから自社製工具用バッテリーからUSB電源が取れるアダプタが発売されています。14.4~18Vの電池用がADP05という品番です。
他社から発売されているADP05類似製品も多く、例えば右の商品は、USB電源に加えライト(照明)を付けたものでアマゾン等で売っています。
安価で、評判も悪くなかったのでこれを購入しました。
外観は下の写真のとおりです。
残容量・電圧計
こちらもアマゾンで買いましたが、私が買った商品の販売ページは今はなく、同じ製品と思われる右の商品が売っています。
下が買った商品です。
取り付けは、枠にはめ込む方式です。
裏に2Pのコネクタがあり、リード線付きコネクターが付属しています。ここから電源を取り、かつその電圧を測定する仕組みのようです。
サイズ
商品ページに右の通り記載されています。
取り付け穴も記載されています。取り付け板の厚みは書いていませんが1~3mm程度まで行けそうです。
機能
基本はデジタル電圧計です。10~100V対応とあります。
残容量は電圧から計算していると思われます。電圧と残量は完全に比例しているわけでなないので誤差はあるはずですが、実用的には問題ないでしょう。
制作
USBアダプタの加工
USBアダプタを分解
アダプタのケースは左右2分割式になっており、2本のトルクスねじで止められています。トルクスのビットを使いビスを緩めると基板の付いた本体とケース2個の3体に別れました。
クリップ部を切り取る
まず、邪魔になるケースのクリップ(ベルトに掛けるためのフック)部を切り取ります。私はボール盤改造の簡易フライス盤(詳細は下記記事参照)を使用しました。
下は加工の様子です
電圧計を取り付ける穴を開ける
次に残量計を取り付ける長方形の穴を開けます。これも簡易フライス盤で加工しました。下が加工の様子です。
取り付け面を平らに削る
左右のケースを組んだ形において、残量計取り付け面が、僅かですが家の屋根のように山形になっています。そのまま取り付けるとシーソーのようにガタつきます。
それで平らに削るのですが、こういうときこそフライス盤の出番です。あまり削りすぎるとケースの厚みがなくなるので、裾の隙間との妥協点で止めました。
わずかに空間が不足
加工した左右のケースを合体した形で下写真のようになりました。
これに残量計と本体を仮組みしてみると、残量計と本体基板との間隔がわずかに不足します。もう2mm欲しいところです。対策として2mm厚の枠を挟み、位置を上げることにします。
アルミ枠の作成
2mmのアルミ板を使って枠を作ります。
- 外形の切り出し
ジグソーを使い切断しました。 - 内側にケースに開けたと同じ大きさの穴を開ける
前述の簡易フライス盤を使って加工しました。 - ライトのスイッチボタンを避ける切り欠きを開ける
これも簡易フライス盤を使いました。 - 仕上げ
最後に紙ヤスリなどで仕上げました。
切り欠きの位置がずれたのと、加工途中で傷を付けてしまいましたが、このまま進めます。
電源の接続配線
残量計の電源入力コネクタを取り去り、リード線をハンダ付け
残量計の裏蓋を外し、基板からコネクタを削除します。ハンダ吸い取り線を使いハンダを吸い取り、コネクタを抜き去ります。
次に基板に電源用リード線2本をはんだ付けします。下は半田付けしたところです。もちろん赤がプラス、黒がマイナス側です。
アダプタ側の電源にハンダ付け
上記2本の電源リード線をUSBアダプター本体基板にハンダ付けします。プラスとマイナスのバッテリー端子とつながるところで、ハンダ付けしやすいところを選んで、赤(プラス)、黒(マイナス)のリード線を半田付けします。下がハンダ付けしたところです。
組み立て
いよいよ組み立てます。
下は片側のケースに本体と残量計を差し込んだところです。残量計と基板の隙間がギリギリなのがわかると思います。
一部背の高い部品があり接触が心配なので、その箇所にビニールテープを貼って絶縁した上、全部組み上げしました。
いよいよバッテリーにセットします。下のように無事表示されました。
右は温度表示に切り替えた状態。この場合残量計とバッテリーが直接接していないので参考程度ですね。
外観については、ライトのボタンと干渉するため、アルミ枠を切り欠いて欠いています。
(切り欠きの精度が悪いのと上右に加工傷がある。アルミ枠自体は見栄えが良いのに…)
下の2枚はバッテリーに取り付けたときの状態です。
残容量計の設定
英語の取説しかありませんが、以下のようになっているようです。
設定ボタン
- 丸ボタン:電源ボタンで、表示のオン・オフ
- 三角ボタン:チョン押で電圧表示と温度表示の切替
設定変更方法
- ▶ボタンを長押しして設定変更モードに切り替える
モードは1~5迄あり、▶ボタンで選択して○ボタンで決定する - 各モードの中でも▶で項目選択し、○で決定する。
- ○長押しで変更して上位の項目に戻る。単に戻るのは▶長押し。
設定の詳細
このアダプタは14.4Vのバッテリーにも対応しますが、私の持っている18Vリチウムバッテリー用に設定します。
- 電池の種類と直列接続段数設定 設定値:L5
L=リチウム(F=リン酸鉄、P=鉛)を選択して 電源ボタンで決定
次の数字は直列セル接続数なので18V(=3.6✕5)だと5段である - 表示の時間設定 offを30に設定
設定時間が経過すると自動で消える - 残量基準値設定 設定値:16 20
左側が残量0%の電圧値設定で、マキタ純正工具の停止電圧から16Vに設定しました
右側が残量100%の電圧設定でマキタ純正充電器の充電完了電圧から20Vに設定しました - アラーム電圧の設定 使いません。
おそらく監視中の電圧が高くなりすぎたり低くなりすぎたりときに警告してくれる機能でしょうが、ブザーはないのでバッテリーマーク横の稲妻マークが点滅するのでしょう - 電圧微調整 変更せず
入力電圧20vで基準電圧の微調整を行えるが、今回はそのまま使用
残量0%と100%の設定は色々な考え方があるでしょうが、私はマキタが使用範囲に想定しているだろう電圧に設定しました。
使用感と反省
使用感
たいへん便利に使用しています。
- 残容量チェッカーとして
互換バッテリーを8個持っていますので、管理するのが面倒なのですが、これだと充電状態を直ぐ確認できるのが良いです。 - USBアダプターとして
大容量のモバイルバッテリーとして使えます。右写真のように薄型の18Vバッテリー(通常10個に対し5個内臓)につければ大きさもそれほど気になりません。 - ライトとして
結構明るいです。ただ、色味がやや緑っぽいのが惜しいです
反省点
残容量計の位置
残容量計を左右ケースの中央においた結果、後でライトのボタンをアルミ枠を切り欠いて逃げる必要が出てきました。少しUSB端子側に寄せて配置すれば、切り欠きせずに済んだと思います。
アルミ枠加工のミス
アルミ枠を使用するアイデアはデザイン上も良かったのですが
- 切り欠き加工の位置がずれてしまった
- アルミ枠に傷を付けてしまいました
という加工上のミスがありました。作り直すのも面倒だし、実用上は問題ないのでこのまま使うことにしました。
補足:互換バッテリーについて
マキタの純正バッテリーは高いので、私は半値~1/4の値段で買える互換バッテリーを使っています。
互換バッテリーはほとんどが中国製で、純正バッテリーと同じ性能・安全性ではありません。扱いを間違えると発火事故等を起こしたりします。
互換バッテリーが純正に劣る点と私の対応
互換バッテリーは容量を偽装していることが問題になりますが、それ以外にも次のようにもっと重要な問題があります。
- 急速充電に対応していない
無理に急速充電を行うと熱を持って発火したり爆発したりする危険性があります。世間で火事などの事故を起こしているのはほとんどこれです。
⇒急速充電はしない。マキタの急速充電でない充電器(品番末尾がSD)を使う。当然充電時間はかかります。 - 大きな負荷に対応しない
使用時にも大電流に対応していません。充電丸のこのような大電力工具で長時間使うと発火・爆発の危険性があります。
⇒大電力工具に使わない。心配な工具はバッテリーが熱を持たないか注意しながら休み休み使うこと。 - 個別の電圧監視をしていない
18VだとLi電池が5段直列に接続されていますが、各段の電圧を個別に監視していません。例えば一段だけ不良になったものをそのまま充電すると他の4段が過充電になり危険です。
⇒純正の充電器で充電し、エラーなど変な兆候が現れたら使用をやめる。 - ホコリ、水濡れに対する保護が不十分
マキタの製品はホコリや水の侵入に対し対策していますが、互換品はほとんどそれがありません。
⇒ホコリや水が入るような環境では使わない。 - 全般に信頼性が劣り、補償も期待できない
純正は品質管理がしっかりしており、万一の場合製造物責任補償があるでしょうが、互換バッテリーには補償の期待はできません。
⇒純正の充電器で充電し、エラーなど変な兆候が現れたら使用をやめる。 - 表示より実容量が少ない
⇒予備バッテリーを多く用意する。
こうしてみるとプロ用途には互換バッテリーを使えません。
しかしDIYでは、十分な知識を持った上で使いこなせば、コストパーフォーマンスは高いです。リスクがあることを承知で、その対策をしながら自己責任で使うことは有りだと思います。