電気ポットの沸騰が止まらなくなり、ついには壊れてしまいました。
修理できる自信はなかったのですが、内部構造への興味から分解を始め、結果的にはネット情報に助けられて修理できました。
目次
商品と故障状況
象印「VE電気まほうびん 優湯生」品番CV-TS22
商品は象印のVE電気まほうびん 優湯生 品番:CV-TS22(2011年製)です。早く沸騰するし、沸騰後の保温温度の設定もできます。口が広いのでジャム作りで瓶ごと煮沸するにも便利に使っていました。
故障状況
最初は沸騰してから自動でヒーターがオフになるまでの時間が長くなる症状でした。それがだんだん悪化して、酷いときはお湯がすべて蒸発するまで沸騰し続けて、異常温度上昇を検知してやっと切れることがありました。それで、沸騰したら手動でコンセントを抜いて対処して使っていたのですが、そうこうしているうちにお湯が沸かなくなってしまった。
表示を見ると2011年製で、寿命としてはやや短い気がします。故障原因が電子部品だとすると部品入手が困難で修理は難しいかもしれないが、中の構造にも興味があり、どうせ捨てるならとダメ元で挑戦してみることにしました。
分解
底蓋を外す
電気ポットの底面をみると右の写真のようになっていました。
素人が分解しにくくするためか、いじり止め付きトルクスネジが使われています。(橙色の丸印)
トルクスネジは過去記事で紹介していまが、下のビットセットのT20サイズを使って外せました。
底板と回転リングを外すと右のようになっていて、新たにビスが3本見えます。
上部を分解
それで上部から固定しているところがあるのではないかと推測しました。
右は製品上面の操作部です。
この表示シートの下に固定ネジが隠されているのではないかと思い、シートをめくることにしました。
周辺の隙間にカッターの刃を入れてなんとかめくれました。
右のように両面テープで貼り付けtてありました。
シートを取った下は、右のように黒い樹脂板で、操作ボタンが並んでいます。
さらに、見えている2本のビス(ネジ)を外します。
すると樹脂板を取ることができ、プリント基板が現れました。
基板上の部品には外観上の異常ははありません。
結局、底を固定しているビスなどは、見当たりませんでした。
分解成功
上部は見当外れでしたので。もう一度底部から分解にトライします。
ACプラグ受け口の取り外し
底部のプラグ受け口の固定ビス(前記写真の青丸印)を外しているので、右のようにプラグ受けが外れます。
プラグ受け口は外に引き出せますが、サイズが穴より大きいので内部側には引き込めません。
更にプラグ受けを引き出して裏側を見ると、右のように光っていました。
これは薄い板で、引き抜く(写真で上方へ)ことができました。
すると右のように内部が見え、電線がナットで固定されています。
ナットを緩めて電線を樹脂部品から外し、線のみを内部に引き込むことができました。
外カバーを外す
もう一度思い切って力を入れて外カバーを引き抜くと、とうとう外カバーを外すことができました。内部は下のようになっています。
点検と故障部位特定
底にある白いボックスの蓋を開けてみると制御基板がありました。
制御基板点検
下が開けたボックスの内部です。見えているのはプリント基板の部品面でこの面には銅箔がない片面基板です。
外見上は特に異常ありません。
次に基板を外して裏側を見たのが下の写真です。こちらが各電子部品間の接続を行う銅箔面です。
こちらもハンダ付けの異常などは見当たりません。
ここまでで外観でわかる異常はありませんでした。
通電テスト
もし、制御ICや温度センサーの故障?となるとやはり故障部品の特定が難しく、見つかったとしても部品の入手が困難です。やや諦め加減になってきましたが、通電してどこまで電気が来ているかぐらいはテスターで調べるてみることにしました。
何回か電源を接続を行っているうちにヒーターが熱くなっているではありませんか。通電するようになったのです。ただし、ジイー、ビビーと音がします。
電源投入時にカチッと音がするのは、リレーが動作する音なので当然なのですが、その後のジイーなどという言う音は異常です。この音もリレーの方向からなので、リレーが故障している疑いが濃くなりました。
ネットで調査すると、リレーの問題が多発している
これはネットに情報があるかもと思い調査したところ、象印の電気ポットで沸騰が止まらない故障は頻発していて、その原因はやはりリレーであることがわかりました。
リレーの仕様
上記プリント基板の写真で右下にある黒い箱が当該のリレーです。表示には
- 品番:Tyco Electrinics 製 品番:PCDF-112D2M
- 駆動電圧:12V 接点容量:15A(125V以下で使用の場合)
となっていて、ネット情報によるとオムロン製の同規格品があり、MonotaROで売っているとのこと。
リレーの品質について
リレーは構造が簡単で容易に作れますが、長期使用で劣化してくると
- 接点がくっついて離れなくなる・・・沸騰が止まらない
- 接点が接触不良になる 接点に電気が流れない・・・お湯が沸かない
- 着いたり離れたりを繰り返す・・・ジーと言う音がする
という、今回のような不良症状が現れます。
長期に渡ってこのようにならないよう寿命保証するのは難しく、OMRONやPanasonic等は積み上げた品質ノウハウがあるのです。
象印マホービンは、基本設計はオムロン製のところをコストが安い互換品を採用したのでしょうが、長期耐久性という品質確認に抜けがあって痛い目にあったということでしょうか。
修理
OMRON製リレーの入手
ネットの情報のとおりMonotaROに
の販売があり、早速発注しました。
右が入手したものの表面側です。見えている銅製端子にAC100Vを接続し、オン・オフします。
右が裏面のプリント基板に挿入する側です。
左の4本の端子は表側のAC端子と繋がっています。
右の細いピンは、直流12Vを供給してリレーのオン・オフを制御する端子です。
リレーの交換
基板についている古いリレーを外します。
ハンダ吸い取り線を使ってハンダを取り除きました。
右が取り外したリレーですが、裏側のAC端子が2本しかありません。
プリント基板にはちゃんと4本分の穴があり、そのままOMRONのリレーを取り付けることができました。(というか本来こちら用の設計なのでしょう)
全ての端子をハンダ付けして交換完了です。
組み立て
部品交換ができたので組み立てを行います。分解から時間が経過したので迷いながらになりました。
右の樹脂部品は、ポットの蓋の付け根の部品です。白がロックする爪で黒を押すことによりロックが外れ取り外し可能になる構造です。当然向きがあるのですが、なんとか正しく組めました。
右はACプラグの着脱部です。
組み上がったので試験をしようとしたらプラグがとまりません。中央の金属板がなく磁石が効かなかったのです。
再度分解して、落ちていた金属板をつけました。
通電試験
表示シートの修復
反省点
最後に反省点を2つ。
まず最初にネットで調査すべきでした。
ネットにリレーの故障の件の情報がありました。分解の仕方の情報もあり、先に調べていたら、無駄に上部操作部を分解しなくて済みました。
分解時に写真を撮っておくべきでした
おそらく直らないだろうと思って分解時に写真を撮っていませんでした。(説明の写真はすべて組立時のもので代用しています) 今回部品入手などで時間が経過してから組み立てることになり、記憶が薄れて苦労しました。経過写真を撮っておくべきでした。
コメント
初めまして。我が家の電動ポットもお湯が沸かなくなり、このたび貴方様のサイトを参考に修理をすることにしました。リレー交換の件で疑問が生じましたので教えて下されば幸いです。
新しいリレーのオムロン製リレー(裏)では、端子が4本ですが古いタイプは2本なのに、4本の端子は全て接続をしたのでしょうか?
アドバイスをお願いします。
はい、4本の端子とも半田付けしました。
各2本を並列に接続したことになります。
一本づつの接続でも動作しますが、全部接続したほうが信頼性が向上します。
この記事が貴方の参考になれば光栄です。
早速のご回答をありがとうございます。
古いリレーを取り外して新しいリレーを接続をしたのですが、やはりお湯が沸きません。
リレーに問題はないと思うので、古いリレーを外すときにハンダ吸い取り線がなかったので、半田こてが滑ったりして基板に傷が付いたのでしょう。直ぐに吸い取り線を購入してから全て接続をして、基板に付着したペーストなども取り除いたりしましたが、やはり駄目でした。
リレーが駆動しているかどうかで原因を切り分ける必要があると思います。
カチッと音がしてリレーが駆動していますか?
駆動しているなら、ヒーターにAC100Vを供給しているリレー2次側回路
駆動していないなら、一次側回路(駆動回路やその前の電子回路)
を、それぞれ点検してみてください。
たびたび申し訳ありません。
リレーはカチッと音がして問題はないようです。2次側回路とはリレーの裏面のコンデンサー隣のピンのことなのでしょうか?テスターで電圧を計測をしますと反応はしません。リレーの全てのピンでは電圧は計測できませんでしたが、しかしヒーターを接続している線(白、黄、黒)では白と黒を計測すると100ボルト、白と黄でも100ボルトが計測されました。
2次側とはリレーの接点出力の意味で、ヒーターにつながる白と茶の線のことです。
リレーがオンしていると両者は同電位になります。
>ヒーターを接続している線(白、黄、黒)では白と黒を計測すると100ボルト、白と黄でも100ボルトが計測されました。
ということは、リレーはちゃんと動作しているようですね。
ならば、ヒーターへの結線が外れたり、断線していないか見てください。
異常がなければ、電源を切ってヒーターの抵抗値を測ってください。
(白と黒、白と黄色)
10kΩ程度以上だとヒーターが断線している可能性が高いと思います。
簡単にヒーターが抜けると思ったのですが、抜くことはできませんね。
ヒーターの抵抗値を計測すると、白と黒、白と黄色では全く反応がありませんでした。
黒と黄色では13kΩが計測されました。やはり原因はヒーターなのでしょうか?
>黒と黄色では13kΩが計測されました。
実物を開けてまでは見直していないので推定でお答えします。
黒色と黄色がヒーターの両端であろうと思われ、その間が13kΩということはヒーター自体は切れていないと思います。
ヒーターとつながっているもう一つの部品がありませんか?
それが温度フューズなどの保護回路であって、切断した状態になっているのではないでしょうか?
このたびは色々とご伝授をいただき、ありがとうございました。
やはり私の力不足で修理を完成することができませんでした。
今回の件では、初めてのチャレンジで大変勉強になりました。
これからはe-farmer様のように様々なDIYなどに挑戦をしたいと思っています。
本当にありがとうございました。
残念でしたが、またDIYに挑戦してみてください。
私も成功例ばかりでなく失敗して諦めた事例も当然あります。専門の技術力が不足とか交換部品が入手できないとか。
だめで元々で直せたら儲けものとやってみて、その過程であるDIYを楽しめたら良いと考えています。
初めまして、大みそかの午後突然お湯が沸かなくなり、上部の操作パネルは正常に動作するのに
…。ネットで貴殿の記事を見つけ、大変参考になりました。正月明けに早速モノタロウでオムロンのセンサーを注文し交換したところ、見事に復旧いたしました。たまたま当方のポットも2011年製の象印ものでいつまでもつかわかりませんが、大事に使用してゆきたいと思っております、本当に貴重な記事に感謝しております。
この記事が役立ったということで良かったです。
わかりやすい記事を書くのは時間がかかって面倒ですが、こういうコメントを頂くとモチベーションが上がります。最近更新が滞っていますが、また頑張ろうと思います。
コメント失礼します。
↑伊藤様と全く同じ状況で、温度ヒューズも交換してみましたが、「沸かす」が全く反応しません。断線の可能性も導通チェックしてみると反応してしまいます。ほかにチェックするべきポイントはありますでしょうか?
回答が遅くなってすみません。
記事と伊藤様への回答の内容の他に特に思い当たるところがないのですが、基板の電子部品が「眼で見てわからない」故障をしていると修理には電子回路の技術が必要で難易度が高くなります。
力になれず残念です。
DIYを愛好する(必要に迫られてる(;^_^A、かな)ものです。
4リットルタイプのポットですが、我が家も突然お湯が沸かなくなり、ここを参考にさせてもらって分解してみようと思っています。
トルクスネジのいじり防止の穴のあいた接続ビット購入からスタートです。
このブログ励みに頑張ってみます。直ればお慰み。
訪問ありがとうございます。
「直らなくて元々、それも勉強!」という気持ちで私もやっています。
象印のポットのお湯が沸かなくなりました。いろいろ検索をしてこのサイトにたどり着きました。
いろいろと症状の対応が載っていて参考にさせて頂いています。
しかしヒーターを接続している線(白、黄、黒)では白と黒を計測すると100ボルト、白と黄では27ボルトが計測されました。リレーはSWを入れると「カチッ」と音はします。これってリレーが不良なのでしょうか?
訪問ありがとうございます。
リレーはカチッと動作音がしているとのことですので、あとは接点不良かどうかですね。
リレーのオン・オフでヒーターの電圧が100ボルト/0ボルトの変化をするならリレーはOKです。
リレーがOKなら温度ヒューズやヒーター自体の断線が疑われます。
ブログ内容を拝見して大変勉強になります。
早速ご質問させて戴きます。
不具合現象はお湯が沸かない。
リレー側に12V電源を入れると作動音して、テスターで回路測定して導通していたのでリレーが生きていると思います。
ただ、ひとつダイオードが気になっています。(D101)
テスターで測定したら30数Ωしか無くて導通しています。逆方向に測ってもやはり導通していました。このダイオードが故障していると判断できるでしょうか。
よろしくお願いします。
ご訪問ありがとうございます。
質問の件、ダイオードを外して測定されていますか?
ポットがもう手元になく、D101の周辺回路構成がわかりませんが、回路に組み込まれた状態で測定されているなら、他の影響を受けてダイオード自身の抵抗値を測れていないのではないでしょうか。本当にダイオードが壊れてショートしているなら、測定値は1オーム以下になると思います。
外したダイオードがおっしゃる測定値なら完全に壊れています。
返信が大変遅くなりましたが、参考にしてください。
象印ポットCV-TY30の修理に大変役立ちました。ありがとうございます。
お役に立てて嬉しいです。
こういうコメントがブログの一番のやりがいになっています。