バイクの改造 (2)エンジンの馬力up (キャブ、エアエレメント、ハイカム、タペット調整)

タペット調整ネジ

前回のアップから日が経ちましたが、リトルカブの改造シリーズです。前回のエンジンのボアアップ以降、3ヶ月ほどバイクの改造が続きました。今回はエンジンの馬力改善の関係について紹介します。

ボアアップで一旦馬力が上がったのですが、その後ハイカムに換えて以降かえって調子が落ち、いろいろやってみても、ボアアップ直後に比べて馬力が上がりませんでした。息子はそれが不満のようで一向に改造熱が冷めません。

馬力向上のためのエンジン周りの改造・調整内容

ボアアップ以降、エンジン周りでやったことは、経過順で以下の通りです。

  1. ハイカムシャフトの交換とタペット調整
    ハイカムに換えると馬力が上がるという情報で換えたが、逆に馬力が出なくなった
  2. メインジェットの交換
    穴の大きいものに変えたが変化なし。
  3. エアエレメントの交換
    変化なし。
  4. マフラーの交換とつまり改善
    少し効果があった
  5. シリンダの再交換
    シリンダに傷が有るかもしれないと分解してみた。異常なかったが、部品購入していたので交換した。当然変化なし。
  6. キャブの清掃
    これは一定の効果あり。しかしまだボアアップ直後の方が良かった
  7. ガスケットの交換とタペット再調整
    ガスケットは問題なかったが、部品を購入していたので新品に交換した。
    タペット調整を行ったが、調整時の上死点設定が疑問になり、見直してタペット調整した
    結果、エンジンの馬力が戻った。

これから挑戦される方の参考になるよう、以下は実際の経過順ではなく、内容ごとに記述します。

1.マフラーの交換とつまり改善

マフラーについては排気漏れ応急修理、交換、焼き、90cc用に再交換といろいろやったので下記記事にまとめます。(現在執筆中ですので公開までしばらくお待ちください)

バイクの改造 (4)マフラー
リトルカブの改造シリーズです。マフラーについて、排気漏れ応急修理、交換、焼き、90cc用に再交換といろいろやったのでここにまとめました。 マフラー関係 排気漏れ応急修理 マフラーの交換 中古マフラー...

エンジンの馬力に関係しそうなのは、マフラーを焼いて内部の煤を落とし詰まりを改善したことです。

2.エアエレメントの交換

エアエレメントはエンジン上方のキャブの前部についていて、吸入する空気をフィルタで浄化する装置です。長い間(おそらく一回も)交換していないと思われるので、新品に交換します。

エアエレメントを取り外したキャブ

キャブの左に付いていたエアエレメントを取り外したところ

ケースに入れたエアエレメント

ケースに入れた新しいエアエレメント

上の写真のように容易に外すことができました。

古いエアエレメントを取り出し、新しいエレメントに入れ替え(右写真)、元通りに取りつけます。

3.キャブの清掃

一般に長年使用中しているエンジンが不調になる原因はキャブが一番多いです。今回は、分解清掃します。

キャブの取り外し

キャブはエンジンのインテーク(吸入部)とエアエレメントの間にあり、2本の燃料チューブ、アクセルワイヤーが繋がっていますので、これらをすべて外し取り出します。

隙間用ラチェットレンチ

ビットを切ってラチェットレンチに嵌めた工具

外すとき一部狭いところのビスは通常のドライバーでは回せず、写真の工具を使いました。

ねじ類は錆が出ていますが、固着はしておらず特に問題なく外せました。

キャブを外した後のバイク

エアエレメントとインテークの間にあるキャブを外した後のエンジン部

取り外したキャブA

取り外したキャブのエンジン側

取り外したキャブB

取り外したキャブの吸気側

キャブクリーナーで清掃

キャブの清掃については、下記記事のように農機具のエンジンでやっていますので、同様に行います。

刈り払い機の修理 (2)キャブレター
以前の記事 で復調した刈り払い機(写真)の調子が最近悪くなってきました。アクセルを全開してもエンジンがふけあがらず、逆に回転数が下がるのです。 キャブレター関係が悪いと思われ、修理を試みま...
  1. 分解してゴム、樹脂類は別にする
    ゴム類がキャブクリーナーに侵されるのを予防します
  2. キャブ本体の孔という穴にキャブクリーナーを吹き付ける
    しずくは容器で受けて溜めておきます
  3. 溜めたキャブクリーナー液で個別の小物部品(ゴム類は除く)を洗う

メインジェットとフロートの交換と組み込み

燃料の噴射量を決めているメインジェットが50cc用であるため、大きい穴径のものに交換します。フロートもついでに新品に交換しました。

組み込む前のキャブ2

メインジェット(赤丸印)とフロート(白い樹脂)を交換し組み込む前のキャブ

シールゴムなども組みこみ、キャブ単体を元通りに組み上げます。

キャブをバイクの元の位置に取り付けて、燃料ホースやアクセルワイヤーも元通り接続します。

4.ハイカムシャフトへの交換

ハイカムとは

通常のカムよりもバルブリフト量、バルブオーバーラップ量を大きくしたものである。一般に給排気ポートを拡大したのと同等の効果が得られ、高回転域では性能が向上するが、低回転域から中回転域でのトルクは弱くなる。

カムシャフトの交換作業

シリンダーヘッド部の分解
カムシャフト交換前

カムスプロケットを外したところ。ベアリング機構はカムシャフトの一部。

  • スパークプラグキャップを外し、プラグを緩めておく。
  • シリンダヘッドカバー、タペットキャップを外す
  • シリンダーヘッドLサイドカバー(カムスプロケットの蓋)を外す
    右側から長い貫通ボルトで固定されています。
  • クランクシャフトを反時計方向に回し、圧縮上死点に合わす
  • カムスプロケットボルトを緩め、カムスプロケット、ノックピン、カムチェーンを外す(右の写真)

カムシャフトの取り外し

カムシャフトは突起部が多く簡単には抜けず、少しこつがいります。

  • 外しやすくするため、カムスプロケットボルトを仮付けする
  • バブルアジャスターをいっぱいに緩める
    後述のタペットアジャストレンチを使うとやりやすい
  • カムスプロケットボルトをつかんでカムシャフトを引き抜く。
    もし引っかかるようならバルブをリフトするようにロッカーアームを押しながら左右に少し回転すると抜ける

下は取り外した部品です。

外したカムシャフト他の部品

取り出したカムスプロケット、カムシャフト、カムスプロケットボルト、ノックピンなど

ハイカムのカムシャフトを取り付け
カムシャフト交後2

取り付けたハイカムのカムシャフト

取り出したカムスプロケットの代わりにハイカムタイプのものを組み込みます。

  • カムシャフトにきれいなオイルを塗っておきます。
  • カムをピストン側に向けた状態で、ロッカーアームを押し込みながら奥に差し込みます。
  • カムシャフト奥側のベアリングが所定の位置(穴)に嵌まれば成功です。

カムスプロケットの取り付け

ボアアップの時と同じですが、要点は以下の通りです。

  1. 圧縮上死点の確認
    カム山が右(ピストン側)に向いた状態であること。逆だと排気上死点である。
  2. 8×12のノックピンをカムシャフトの孔に差し込む
  3. クランクシャフトのTマークを合わした状態でスプロケットの○印を左側に合わすようチェーンをかけ、スプロケットを嵌め込む
  4. 2本のカムスプロケットボルトで固定

カムを交換したので、この後当然タペット調整が必要です。

5.タペット調整

タペット調整とは?

エンジンはカムシャフトのカムでタペットを動かし、給排気のバルブを叩いて開閉をしている。

エンジンが冷えた状態では上死点でカムとタペットの間に隙間があるのが正常で、その隙間量を最適にするのがバルブクリアランスの調整で、「タペット調整」とも呼ばれる。

タペット調整に必要なツール

シックネスゲージ

シックネスゲージすき間の計測にはシックネスゲージという工具を使います。

今回使用したのは右の写真のもので、
0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.10、0.15、0.20、0.30 〔mm〕
がセットになっています。薄い鋼ですので各ゲージは容易に曲がります。

タペットアジャストレンチ

タペット調整では、9mmのロックナットを緩めて、調整ねじの四角い先端を回して調整します。

工具は9mmのスパナとラジオペンチなどを使ってもできないことはないが、専用工具の「タペットアジャストレンチ」(右写真)を使用するとやりやすい 。

ピストンの上死点とタペット調整について理解する

あやふやな知識で行うと失敗することがあります。反省

圧縮上死点と排気上死点がある

4サイクルエンジンの工程は、ご存知のように

吸気→圧縮爆発→排気吸気

ですが、上の色つきの矢印のポイントがピストンが一番上にある上死点であり、工程の1周期で2回有ります。

  • 圧縮上死点(’’印):圧縮肯定から爆発肯定への変わり目で、吸・排気バルブが完全に閉じている
  • 排気上死点(’印):排気肯定から吸気肯定への変わり目で、実用エンジンではオーバーラップと言って、吸・排気バルブ共わずかに開いている。つまりクランクシャフトがわずかに吸排気用の2つのロッカーアームを押し上げ、吸排気バルブの両方を叩いている状態なのです。
タペット調整は圧縮上死点で行う

バルブクリアランス調整は圧縮上死点で吸排気バルブが完全に閉じている状態で行わなければなりません。

排気上死点で調整をしてしまうと、バルブクリアランスが正規より広くなり、エンジンの不調の原因となります。実際なりました!(≧▽≦;)

圧縮上死点を区別する方法

ピストンの上死点フライホイールのTマークはピストンが上死点にいるという印ですが、これだけではどちらの上死点なのかはわかりません。4サイクルエンジンの1周期でクランクシャフトは2回転しますが、カムシャフトは1回転ですので、圧縮上死点を排気上死点と区別するにはカムシャフト側に注目すればよいのです。

具体的には以下3つの方法があります。

1)カムスプロケットの丸印で見分ける
カムスプロケットの圧縮上死点

切り欠きと丸印を合したところ

カブでは、カムスプロケットの丸印が左に有るときが圧縮上死点です。

ただし、カムスプロケットが正しく取り付けられていた場合です。素人整備では逆付けの可能性もあるので注意です。

心配なときは次の方法で行う。

2)吸気のカムの動きで見分ける

吸気イン側のカムが動くのが吸気工程だから、フライホールを反時計方向に回していくとき、吸気のカムが動いて次におとづれる上死点が圧縮上死点になります。カブの場合上側の開口から見えるほうが吸気です。

3)クランクシャフトのカム山で見分ける

カブの場合、前のシリンダーカバーを開けるとクランクシャフトのカム山の動きがが見えます。フライホールのTマークで上死点を合わしたときに、カム山が奥(ピストン側)に来る場合が圧縮上死点です。

エンジン不調の原因は上死点を間違えて調整していた

50ccから75ccにボアアップ後いろいろ改善してきましたが、現状は最高時速60km弱くらいまでしか出ず、ボアアップ直後より落ちています。その原因はこの上死点を間違えて調整していたことにあったようです。

1回目のタペット調整のとき、上記の内容を理解しておらず、カムスプロケットを逆に取り付けたため、圧縮上死点で行うべきタペット調整を排気上死点で行なっていた

そのため、バルブクリアランスが広すぎる=給排気のバルブを十分にたたけない=バルブの開きが少ない→馬力が出ない、というわけです。

上死点を取り違えるとエンジンが壊れるとかの記述もネット上にありますが、このようにバルブクリアランスが広くて馬力が出ない不調になるだけのようです。

タペット調整作業

要点
  • エンジンが冷えた状態で行う
  • シックネスゲージが必須
  • アジャストレンチを使うと簡単
  • 圧縮上死点を確認
  • 蓋のボルトをなめないように
    レンチのかかりが薄い、角がまるくなっていたら早めに交換
  • 吸気側と排気側の両方を行う
タペットキャップを外す

タペットは吸気と排気の2か所あり、調整用の穴(開口)にタペットキャップがついています。キャップの頭は六角ボルトの頭になっていて、スパナなどでで緩めて開けます。

タペットキャップのボルトをなめてしまった

これまでの作業でタペットキャップのボルトの角が丸くなってやばいなと思って交換用のキャップは用意していたのだが、今回案の定なめてしまった。エンジンが冷えていると硬いので余計だ。

なめたタペットキャップを外す。。。苦労した
1)水道用パイプレンチでボルト部分を掴んで回す

なめたタペットキャップの六角部分を水道用パイプレンチで掴んで回そうとしたが回らない。私よりずっと力が強い息子でも駄目。

2)溝を彫る

タペットキャップの取り外しのため溝加工次に、以前成功した方法で、ディスクグラインダーで溝を切ってドライバー式に回そうと思った。

右写真のように中央に穴が開くほど溝を深くした。しかし回らなかった。

困った!! (-_-;)

3)外周を掴んで回す

タペットキャップ交換後息子と交代し、彼が水道パイプレンチで外周を掴んで回したら緩んだ。

私は先入観で六角のボルト頭部だけしか頭に無かったが、確かに外周を回した方がトルクは大きくなるわけだ。

右は新しいタペットキャップを取り付けたところ。

調整の仕方

タペット調整ネジ目的の隙間に対応したゲージを用意しておいて、次の手順を行います。

  1. ロックナットを緩めて一旦隙間を広く開ける
  2. シックゲージをタペットの隙間に差し入れ、調整ねじを閉めていくと当たって止まる。
  3. そのままだとシックゲージが抜けないので、抜ける程度に少し緩める。
  4. 調整が動かないように注意しながらシックゲージを抜いてロックナットを締めて固定する。

2.のシックゲージをタペットの隙間に差し入れるのにはコツが要ります。調整口は写真のようになっていますが、ここから差し込んだシックネスゲージが曲がるのを利用してタペットの隙間に入れるのです。もちろん中の様子は見えませんから手の感覚で行います。

改善効果

エンジン関係最後の作業であるタペット調整をしたこの日(12月28日)は作業開始が遅く、上死点問題に悩みながらの作業だったので夜遅くまでかかった。照明をつけて寒くて震えながらも何とか元に組み戻すことができた。

もう夜中になっていたが息子はバイクに乗って帰って行った。暫くして息子から来たメール(原文のまま)

お父さん、戻ったよ!スピードがちゃんと出るよ!! ありがとう!イヤッホー!!

結局、ボアアップ後のマフラー、キャブ、ハイカムなどの馬力向上策が、スプロケットを逆付けして上死点を間違えたタペット調整のため台無しになっていたものが、正規にタペット調整をしたら一気に効果が表れたものと思われる。

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