この度は耕運機の始動紐(スターターロープ)が切れました。農業機械の始動紐が切れるのを経験するのは3回目になります。機械が古くなるとどうしても切れる消耗品的なものなんですね。
今回は3回目で慣れてきましたので、検索で来られる方の参考になるよう交換の仕方を丁寧に記述しようと思います。
始動紐が切れた耕運機
始動紐が切れたのは、オークションで入手したヤンマーのYKR50という古い耕運機です。(下写真)
以前から始動紐の戻りが悪かったのを我慢してなんとか使っていましたが、とうとう紐が切れてしまったわけです。
分解・調査
農機は大抵そうですが、スターター部分がユニットになっていて、ユニット部を外してメンテできます。
スターターユニットの取り外し
右はスターターユニット部です。
ユニットを固定しているのは赤丸印の3箇所のボルトです。これを緩めます。
右のようにユニットが外れます。
元の位置にエンジン側のプーリーが見えています。
スターターユニットの分解
押さえの円板を外す
右写真は外したスターターユニットの内部を見たところです。
中心にあるボルトを緩めると、紐が巻きついたリールを押さえている円板が外れます。
円板を外したのが次の写真です。
仕組みを理解する
樹脂でできたラチェット板とねじりバネ(トーションバネ、ねじりコイルスプリングとも呼ばれる)が見えます。
紐を引いた時にこのラチェット板が外側に広がって爪部分がエンジン側プーリーの内側に引掛り、エンジンを回します。紐を放すと、ねじりバネにより中心部に納まった上の状態に戻り、ゼンマイバネにより紐が引き込まれます。
リールを取り出す
前記写真の状態でリールを引き抜くことができますが、まず先に、ラチェット板とねじりバネを先に取り出します。
次に裏にあるゼンマイバネが外れないように、そっと気をつけて抜きます。
下が外した様子です。左がリールケース、右がリールです。
始動紐の調査と購入
外したリールから紐を抜く
右のように紐の端の結び目をリールから引き出して抜きました。
持ち手側に残った紐を抜く
これも紐の端の結び目を引き出して持ち手(取っ手、ハンドル)から紐を抜きました。
抜いた紐の太さと長さを計る
まず、太さの測定ですが、紐が伸びて細くなっているところを避け、伸びていない端に近いところで計ります。直径は実測で5mm弱でした
長さは切れた2本の長さを足すわけですが、切れ目のほつれがあり、結び目がそのままで126cmでした。
以上により、紐が新品のときは直径5mm、長さ130cmだったと推定しました。
始動紐の購入
アマゾンで太さ5mm、長さ2mのスターターロープ(右図)があったので、これを買いました。
もし、ドンピシャのものがなくても多少の差は許容範囲です。実は応急処置で手元にあった直径4mm、長さ1mでやってみたことがありましたが、これでもちゃんと始動できました。
修理作業
清掃
切れる前は、紐の戻りが悪くなっていました。潤滑グリースが働いていないのが原因です
清掃
リール、樹脂製ラチェット板、押さえ板には土埃が付着したり、グリースも埃にまみれて固くなっています。これらを取り除き、きれいにします。
右は雑ではありますが、古いグリースを取り除いたものです。この凹みの部分に新しいグリースを塗ります。
紐の交換
紐の切断
買った紐は2mあるので、必要な130cmに切ります。
切る位置の目印と切った後のほつれ防止の為、下写真の様に半幅にしたビニールテープを巻きつけてから、切りました。
紐をリールの孔に通す
リールの孔に紐の端を内側から通し、一回結んで抜け止めのコブを作ります。
次に紐を引っ張って戻し、結び目をリールの凹みに当てます。(右図)
紐をリールに巻く
紐を巻く向きは、下の写真のようにリールケースの穴(赤丸印)の向きに合わせます。紐を巻いていくと溝の深さにちょうど収まり、巻き終わりも切り欠きより少し余る長さでぴったりでした。
スターターユニットの組み立て
リールの確認
右は紐を巻いたリールです。紐はリールの切り欠きから横に出しておきます。(切り欠きがある場合)
ゼンマイバネがきちんと正しい位置にあるかを確認します。外側の端は切り込みにハマっていて、内側は自由になっています。手前にはみ出したりしていないこと。
リールのはめ込み
紐をリールの切り欠きに嵌めておいて、ゼンマイが奥になるようにはめ込みます。
右回転(紐を引く方向)して内側がリールケースの溝と引っかかるのを手の感触で感じます。
次にグリースをたっぷり塗ったラチェット板をはめます。
続いてねじりバネをはめたところが、右写真です。
押さえ円板の取り付け
押え円板にもグリース
押え円板の内側にドーナツ状の凹みがあるので、ここへもたっぷりグリースを塗りました。
円板をはめてボルトで固定
右図のようにはめ込みました。リールがスムーズに回ることを確認します。
引き込み力の調整
次に紐をリールケースの穴を通して外に引きす前に、紐が根元まで戻るように調整する必要があります。前図において、右回転(紐を引き出す方向)に約一回転します。
紐をリールケースから外に引き出す
紐の端が枠の穴に通る位置まで来たところでリールの位置を保持し、紐を枠の穴に通して外に出します。
引き出した紐を引き出して緩めたとときに紐が最後まで引き込まれるかを確認します。グリースが効いていればこれで行けるはずですが、引き込み力が弱いときは、紐を内部に戻してもう一回転加えて引き込みを強くします。
なお、これらの作業中、ゼンマイバネの力で勝手にリールが回って戻ってしまわないように、リールまたは紐を保持している必要があります。
持ち手に紐を通す
紐をリールケースから適当な長さを引き出し、持ち手の穴に通します。紐の端がテーピングしてあるので通しやすいです。
持ち手に紐を止める
紐に結び目を作る
紐の端を結び、抜け止めのコブを作ります。結び目の先は、解け防止の意味から短いより長めが良い。
結び目を持ち手の穴に収める
紐を引っ張り戻し、結び目を持ち手の穴に入れます。
写真のように結び目の先を長くておいたが、ハンド類の穴は大きくて全部入った。もし入りきらない場合は先を切れば良い。
なお、紐を結ぶときビニールテープ(購入時付いていたもの)が取れてしまったので、ライターの熱で先を溶かして固めてみましたが、最初からテープでなくこの方法でも良かったですね。
ユニットの状態で動作確認
紐を引くとラチェット板が広がること、放すと紐が最後引き込まれることを確認します。
これでユニットとして完成しました。
スターターユニットの組み付け
次に本体に取り付けます。
リールケースには孔が3組あって3段階に角度を変えてつけられるようになっていますが、今回は元通りの位置で3箇所のボルトを締め固定しました。(下写真)
これで修理完了です。