自分で不動産登記 (7)抵当権の本人登記を金融機関と交渉

「自分で登記をする会1」の表紙(部分) 抵当権設定登記を自分でするのは金融機関が嫌がるからとあきらめていたんですが、最初からあきらめるのではなくて、融資をしてもらうという弱い立場ながらどこまで抵抗できるかやってみることにしました。

そして融資者の住宅金融Sとその代理店であるM銀行と交渉を重ねた結果、ついに本人登記を認めてくれました。2013年12月のことで記事アップが大変遅くなりましたが、経過を記録に残します。

不動産売買の融資と抵当権設定登記

我々庶民は不動産購入のためお金を借りるのですが、通常、借金の担保として不動産に抵当権を設定することを要求されます。その不動産取引での所有権の移転や抵当権の設定は「登記」することで確定します。

融資実行と抵当権設定は同時が望ましいが

このような不動産取引の売買契約では、契約不履行によるトラブルを避けるため
1.物件を不動産業者から買い手の所有にする
所有権保存登記または所有権移転登記(以下総称して所有権登記と記す)により実効する。
2.金融機関から融資を受ける
3.不動産業者に代金を支払う
4.不動産に抵当権を設定する
をできるだけ同時に行います。

しかし現実として、登記に関しては別途登記所に出向いて登記申請することになりますので、時間がずれてしまうのです。時間のずれにより生ずるリスクを誰かが負うことになります。

融資実行 ⇒ 抵当設定登記 の順の場合:両者同日が一般的

繋ぎ融資無しで直接銀行で借りる場合、売買契約(資金交付)の後、銀行指定の代理申請人たる司法書士が
・所有権登記
・抵当権設定登記
を一緒に同日申請するのが一般的です。

その詳細手順は

  1. 金融機関は、建築業者が用意した所有権登記に必要な書類がそろっていることを確認
    物件が購入者の名義にできる=物件を担保に取れるということを確認するのです
  2. 金銭消費貸借契約
    買い手と金融機関の間で金銭消費貸借契約(いわゆるローン契約のこと、以下金消契約と略す)を交わす
  3. 融資実行(資金交付)
    金融機関から業者に代金を振り込んでもらう。振り込まれたことを確認した業者は所有権登記に必要な書類を渡す
  4. 所有権登記・当権設定登記申請
    購入者が抵当権設定に必要な書類を提出 。金融機関指定の司法書士が、早急(普通当日中)に所有権登記と抵当権設定登記を同時に申請する。

不動産業者は事前には登記書類を渡して くれません。お金と引き換えです。銀行は担保設定が可能か事前の調査をし、融資実行後は早急に担保権確保のため登記をします。
つまり、不動産の名義を変更して取得した同じ日に、その不動産は金融機関の担保になるということです。

この順序で行くと資金交付から抵当権設定登記の間に時間があり、抵当権設定が本人または本人指定の司法書士だと銀行にややリスクがあることがわかります。悪徳者が 融資金を受取り、該当物件に抵当権を設定せず転売するなんていう恐れがあるのです。だから銀行は本人登記を認めず、司法書士を指定するのです。

この場合に本人申請を認めてもらう説得法として、金消契約後の抵当権設定の登記申請に、金融機関の担当者に同行してもらうよう依頼する案が参考図書「自分で登記をする会1」に載っています。

抵当権設定登記 ⇒ 資金交付 の順の場合:繋ぎ融資が必要

本来の不動産融資に先立って別途繋ぎ融資を受ける場合は以下のようになります。

  1. 繋ぎ融資を受けて不動産の代金を支払う。引換えに所有権登記に必要な書類をもらう
  2. 所有権登記を行う
  3. 抵当権設定登記を行う
  4. 金消契約を結び融資実行を受ける
  5. 上記の資金で繋ぎ融資を返済する

この場合は先に登記をしますので、抵当権を設定したのに悪徳金融機関がお金を貸してくれないかも知れないというリスクを借手側が負うことになります。また、借手側には先立って繋ぎ融資が必要で、その間の金利手数料がかかります。

貸し手である金融機関のリスクはありません。ですのでこの場合本人登記を断る理由がないはずです。 事実、金融機関に本人登記を申し入れたら”融資実行日は抵当権設定確認の2~3営業日後でよいなら”という条件で受けてもらえたという例が自分で登記.com-お客様事例に紹介されてiます。

本人申請を認めさせる交渉

私が本人申請を認めてもらうまでの経過です。

交渉開始までの状況

専門業者と住宅(アパート)を建てる契約をして、9月末に既に完成しています。お金を借りるのは住宅金融Sですが、実際の契約業務は代理店のM銀行と行います。

住宅金融Sは銀行などと違い、工事完成後の審査を行いその約2ヶ月以降に融資実行なのです。そのため、工事完成時の支払いのため繋ぎ融資が必須で、私は建築会社系列のファイナンス会社から繋ぎ融資を受けています。 ですので先に書いたように金融機関側のリスクがなく本人申請が認められやすいはずです。

11月下旬になっていよいよローン契約(金消契約)を結ぶ段階になったので、登記の本人申請を申し出ることにしました。

金融機関との交渉
1.住宅金融Sに抵当権設定登記を自分で申請したいと申し出る(電話)

若い担当者Sさんが対応してくれた。
S:そういう希望を聞いたことはありますが、リスクがあり認めていないと思う。確認します。
S:M銀行の本部担当者と確認したところ本人申請は認めていません。

やっぱりか_| ̄|○と、このときは半分あきらめていた。ただM銀行に行ったとき理由を問いただしてやろうと思った。

2.銀行での打ち合わせ

住宅金融Sの代理店であるM銀行に契約の事前打ち合わせに行った。ここで本人登記を申し出る。

対応してくれたのは中堅の行員Mさん Wは私の発言
M:できない。
W:リスクはないはず。理由は?
M:住宅金融Sと話をされたか?
W:M銀行がだめだからと言われた。なぜだめなのか?
M:(一般的なリスクの説明のあと)事故があると住宅金融Sに迷惑をかける。
W:下記理由から貴行のリスクは小さいはず。
・抵当権設定の後の融資実行でリスクはない
・私は貴銀行とは他支店で35年、貴支店でも15年の付き合いで信用があるはず
・表題登記や保存登記も自分でした。登記申請のスキルには問題ないはず
M:住宅金融Sがだめだといっている。
→その場で住宅金融Sに電話して住宅金融S側の理由ではないことを確認。
W:貴行の規則にあるのか?
M:規則にはないが、マニュアルには司法書士に依頼するようになっている。
W:そのマニュアルは一般的な同一日に全て行うことを前提にしていて、今回のように抵当権設定後に融資実行の場合は想定していないので、マニュアル通りでなくてもよいのではないか?
M:住宅金融Sから契約時に、司法書士の「間違いなく登記申請する」という書類(誓書)を要求される。司法書士でないと期限内に登記完了するかリスクがある。
W:じゃ住宅金融Sが本人申請OKならよいんですね。

Mさんは一担当者であり、M銀行の本部に伺いを立てながらの回答であった。本部は住宅金融Sと連絡を取っているのだ。この日は結論が出ず帰って来た。

3.住宅金融Sと再度電話で交渉

W:M銀行は住宅金融Sが本人登記を拒否していると言っています。法律では本人登記が原則ですよね。

Sさん困ったようで、その上司も出てきて事情を聞かれたが、時間をくれということで後日電話があった。
S:本人申請「できるか」「できないか」と言えばできます。どうしても本人申請とおっしゃるなら必要な書類を準備します。
W:本人申請で御願いします。

やったあ\(^▽^)/

日程の問題浮上
4.数日して住宅金融Sから電話があった

S:例がほとんどないので、住宅金融SもM銀行も担当者が上司にお伺いを立てながら、取り決めの文章を作ったりして進めているが、抵当権が設定されたことを確認するための日程が余分にかかる。資金交付が12月下旬から1月中旬に遅れるが、問題ないか?

説明すると、住宅金融Sの融資の仕組みは、金消契約の後手持ちの債権などを売って現金化し融資金とするので、金消契約から資金交付まで最低2週間かかり、かつ月2回の交付日が決まっているのでタイミングによって半月ずれるのである。

繋ぎ融資を受けているファイナンス会社に問い合わせると、繋ぎ融資の契約は3ヶ月なので、返済は12月中でないとだめだという。

困ったが、それなら金消契約を前倒しすればよいのではないかと、こちらからSに提案した。

5.自己申請に関する金融機関から条件提示

結果、4日前倒しで金消契約することになったが、それでも日程がぎりぎりという理由で下記条件を出された。

  1. 契約当日に登記申請し、受理書を住宅金融SにFAXする
  2. 登記完了したら直ぐに、登記謄本を支援機構にFAXするとともに、原本をM銀行に提出

住宅金融Sは融資実行の作業にかかる前に登記完了を確認する方針で、そのためFAXを利用することにしたようだ。

融資金の振込みがまだ先なのに登記完了確認を急ぐのは、債権の売却もリスクだということか、あるいは債権の売却から資金交付まで全て銀行任せのため、住宅金融Sの手を離れるということかもしれない。

もちろん私はこの条件を呑んで、先の記事 自分で不動産登記申請 (6)抵当権設定登記 の通り、本人申請で抵当権設定登記することになったわけである。

交渉を終えて

担当者次第で変わる

本人申請を認めたくない、担当者の心理を勘ぐってみると
・経験がないことは、無難な方向で済ませたい
・面倒なこと(リスクが少しでも高いこと)は避けたい。トラブルがあったときに面倒。
・強く出てくる人に規定がないのに拒否すると、これも不当な対応だと後で問題になっても困る

私以前にも本人申請の申し出があっただろうが、担当者とその上司の対応次第。
融資する側の強い立場であれば拒否することも可能であるが、今回の担当者は、横柄な態度ではまったくなかった。経験のないことだけに最初は渋ったけれど、こちらの正論にたいし真っ当に対処してくれた。

感情的にならず、正論をぶつける

こちらも融資予約を取り消されては元も子も無いのでひやひやではあったが、だめもとで
・法律では登記の本人申請が認められているばかりか、本人登記が原則とされている
・抵当権設定に関する貸手のリスクはない
という正論をぶつけた。交渉を通じて私も相手も感情的になるシーンは無かった。

金融機関の事情

今回の金融機関の対応事情を想像してみた。

できれば説得して本人申請をやめさせたいが、正論でくるので説得できる理由がない。 住宅金融Sと代理店M銀行は当初できない理由をお互いのせいにしていたが、事実は両者の取り決めに本人申請の場合が配慮されていないため。

結局M銀行は代理店なので責任を住宅金融Sに求めた。 住宅金融Sは拒否するもっともな理由がなく、下手な対応でメディアなどで問題化するのは避けたい。
(今から思うと上司が質問してきたのは、私にバックがあるのかなどを探ってきたように思う)

これまでは本人登記を認めないでやってきたので対処する規定もなく、日程もその前提で組まれている。 ⇒見直し検討した結果、特例として今回の対応になった。

この記事の公開について

住宅金融Sは取り決めの文章を見直したそうなので今は少しやりやすくなっているかもしれませんが、本人申請は歓迎されない状況には変わりありません。この件に関しても吹聴しないようにと言われています。 そのことも配慮してこの程度の公開にしておりますので、この記事をダシにしての交渉はしないでくださいね。

私はこの分野のまったくの素人でしたが、一連の本人登記で登記制度を勉強し、今回は特に不動産取引の仕組みについて理解が深まるとともに、さらに組織との交渉を経験して良い社会勉強になりました。費用の節約もありますが、人生の経験として良かったと思います。


登記申請で参考にしている本です

  


スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

  1. […] この順序で行くと資金交付から抵当権設定登記の間に時間があり、抵当権設定が本人または本人指定の司法書士だと銀行にややリスクがあることがわかります。悪徳者が 融資金を受取り、該当物件に抵当権を設定せず転売するなんていう恐れがあるのです。だから銀行は本人登記を認めず、司法書士を指定するのです。 引用元-Do It Ourselves! それ自分でやってみたら […]

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

トップへ戻る