ちょっとした小型のテーブルが必要になったのですが、物置の台になって眠っている古いテーブルを思い出し、木工の勉強を兼ねて再生することにしました。
目次
1.現状と再生法の検討
現状の姿
上の写真が当該のテーブルです。天板は無垢の一枚板ではなく、いわゆる張りぼての合板でした。
美観が悪い
見ての通り、天板の汚れ・欠け・傷を始め、直すべき点はたくさんある。
ぐらついている
問題は美観だけでなく、手で押すとぐらついて構造がしっかりしていないことである。
下が裏から見たところで、台枠の木と木の接合部は、ほぞ組になっています。
写真ではわかりにくいですが、緩んだほぞの部分に横から釘を打って、ほぞが抜けないように修理されています。しかしその修理では、ぐらつきを直すことはできていません。
ぐらつきをなくす手法を検討
木ねじで強化
木組みの部分を、ネジ釘で縦方向に締め付ければある程度改善すると思われます。
テーブルコーナー金具を使う方式
先の記事
でテーブルコーナー金具を使用しましたが、構造の強化に効果的でした。
この方式は、右の様に幕板をコーナー金具で繋いで枠を構成し、脚はコーナー金具の穴に通したビス(ボルト)で斜め方向に引きつけて固定するもので
- 堅牢で脚のぐらつきが少ない
簡単な構造なのに驚くほど堅牢になります。 - 斜めのビス(ボルト)だけを外せば脚が取れる
使用しないときに脚を取り外して占有体積を減らせます。 - 突き当てているだけなので高精度な加工が不要
加工精度が必要なホゾ組みやダボを使う必要がありません。
と言う特徴があります。今回この方法を採り入れてみたいと思いました。
ただ、このテーブルコーナー金具が一般のホームセンターには売っていないのです。
コーナー接合部品は木でも作れる
テーブルコーナー金具の代わりに、木の部品を使って実現している市販のテーブルがありました。右の写真は、脚を外した状態ですが、白い天板と幕板と接合部品が見えます。接合部品は一枚の板で、幕板と同じ材料で作られているようです。
木で作る場合は、斜めに切ったり、斜めに穴を開けたりしなければならず、多少加工技術がいりますが、今回このやり方で挑戦してみることにしました。
分解
方針が決まったので分解から始めます。
天板を外す
天板は木ネジで止められていて、木ネジを緩めると外れて台枠と分離できました。
台枠を分解
台枠も、修理してある釘が邪魔になるので全て抜いて分解します。
釘は抜くときのことが考えられていないのでやっかいです。錆びていて簡単に抜けないし、途中で切れたりする。そして抜くときどうしても木に傷を付けてしまうのです。
その点、ネジ釘は接合する力が強く、それでいて外すのも簡単で便利だ。
奮闘して傷をつけながらも何とか全ての釘を抜いて、台枠を分解できました。
2.台枠の修理
コーナー接合部品を作成
テーブルコーナー接合部品を木で作ります。
- 切り出し
手元にあったツーバイフォーの端材を三角に切り出しました - 孔開け
幕板とは2点止め、脚は一点止めで合計5個の孔を開けます。幕板を止める孔は幕板に垂直になるよう、脚を止める孔は脚の中心に向けて開けます。
右はバイスに掴んだ木片の水平を取っているところです。この後ボール盤で孔を空けます。
右ができあがったコーナー接続部品です。
各孔には木ネジやビスの頭が出ないよう、座ぐり穴を設けてあります。
中央が脚を固定する孔ですが、中央からやや上方にずれています。これは加工の誤差ではなく、木組みが縦横で非対称で方向が45度からずれるためで、設計どおりです。
台枠の構造強化
再組み立て
台枠をもう一度元の形に組みます。この段階ではぐらぐらしています。
三角コーナーの取り付け
- まず、長い木ねじをコーナー接続部品の中央の孔に通し、台枠と脚を仮止めします。
このとき幕板、脚、三角コーナーの天面が揃うように形を整えて固定します。 - コーナー接続部品と幕板を固定する
2本の木ネジを本締めします。脚と幕板の間は、ネジでの固定はありません。 - 4コーナーともできたら、最後に台枠と各脚をとめる長い木ネジを本締めします。
この段階でぐらつきがほぼなくなりました。
脚に中段の桟をビス締め
更に構造を堅固にするため、中段の桟木にも、脚からネジ釘を打って強化します。
ビスの頭が隠れるようダボ穴加工しておいて、木ネジを締め付け後、木栓をします。
右は木栓で埋めた後です。
棚桟をビス締め
4本ある棚桟も同様に桟木から木ネジで固定します。
こちらは棚桟材の厚みが約10mmと薄いので、木ネジの先がはみ出ないように注意が必要でした。一箇所も外さずにできました。
強化完成
以上で構造の強化ができました。下は台枠の全体の姿です。
大きな傷、欠けの修理
次に、外観上の大きな傷・欠けを修正します。
分解時に割れた部分を接着
右は木工ボンドで接着しようとしているところ。
凹みを埋めるパテの材料を選択
との粉でカバーしきれない大きな傷や凹みを埋める材料がパテです。
木材塗装に使うパテに求められる性質として
- 整形作業に早くかかれるよう、渇きが早いこと
- 乾いた後も凹まないよう、退縮しない性質であること
- ペーパーがけが効き、削りやすいこと
- ニスなど塗料が乗りやすいこと
が考えられます。木工用ボンドは2.がNGです。手元にあった万能接着剤も試してみましたが、乾燥後もゴムのように柔らかく3.4.が満足できません。試していませんが、ネットで瞬間接着剤が良いとの情報もありました。
私が使い慣れている水中用エポキシパテ(右)は上の条件をほぼ満足していますので、今回も使いました。
ネジ釘の頭穴と釘跡穴を埋める
木栓をしていないネジ釘の穴や元の釘穴、その他の傷凹みをパテで埋めます。乾いたらサンドペーパーで平滑に仕上げます。
右は短手方向の面で、4個のネジ釘の頭穴を隠し、二つの凹みを整形しました。
右は、長手方向の面です。
下側がねじ釘の頭を隠した跡、上側が釘を抜いた傷跡の穴を埋めた跡です。
3.天板の修理
裏板の剥がれ
天板は張りぼてであるが、その裏側のベニア板が剥がれてきている。
右は当て板をしてクランパーで固定し、乾燥させているところです。
隅の欠け
天板の表面には下左のように隅の欠けがります。下右はこれをパテで埋めてペーパーで整形したところです。
周囲(側面)も手当てして天板の整形が完了です。
4.塗装と脚の仕上げ
天板の塗装
古い塗装は完全に剥がす
面倒だと古い塗装を剥がさないで重ね塗りすると、ニスは半透明で下地が透けるのでムラになるのです。
右は広い面積を能率よく作業できる充電サンダーです。
塗装前の仕上げに、との粉で目止めします。下が目止めが終わり塗装準備ができたところです。
パテ部分を着色する
ニスは下地が透けます。との粉は最初白くてもニスを塗ればなじんでわからなくなりますが、白いパテの部分はそうはいかず目立ちますので、周囲と同じ色に着色します。スプレーニスを容器に出し、筆で塗りました。
スプレーニスで塗装
塗装はカラースプレーニスを使います。色はホーム炬燵で使って残っていたチークですが、実際の色は黄色っぽくなります。
カラーニスは半透明ですので下地の色が透け、厚く塗ると色が濃くなります。
コツは、垂れてきますので一回に濃く塗らないこと。薄く何回もぬります。垂れたところや色ムラが出たところは、乾いてから濃いところをサンドペーパーで削り、再塗装します。
ただ、次の処理ができるまで乾燥するのに丸一日かかりますので、時間をかけて根気よくやるしかありません。
天板は、仕上げにクリアのスプレーニスを塗り、保護します。
脚の仕上げ
脚の長さ調整
塗装ができた天板を台枠にネジで止めて一応完成ですが、床に置いてみるとガタガタします。4本の脚の長さが揃っていないようです。
長い足を鋸で削り、サンダーで仕上げて合わせました。
脚底にフェルトを貼る
床の傷つき防止のため、脚の底にフェルトを貼りました。
5.完成の姿
テーブルの再生が完成した姿です。
塗装に関しては時間がかかった割に仕上がりに不満が残りましたが、構造強化はうまくいきました。
やっぱり木工は楽しい。