ペール缶で作る狼煙上げ用ストーブと焚火缶(もどき)

のろし駅伝という催しに使うため狼煙(のろし)を上げるストーブを作りたいと思って調査していたところ、焚火缶なるものを見つけ興味を惹かれました。

それで、ペール缶を使ってまず煙を出す狼煙上げ用ストーブを作って狼煙上げに使い、その後煙が出ない焼却炉「焚火缶」にステップアップすることにしました。

制作動機

近江中世城跡琵琶湖一周のろし駅伝

狼煙のリレーを行うのろし駅伝は全国的に行われているようですが、滋賀県では毎年11月23日(勤労感謝の日)に近江中世城跡保存団体連絡会「近江のろしの会」の主催で開催されます。当地の里山の頂上にも城跡があるので毎年参加しています。

狼煙(のろし)はオオカミの煙と書きますが、昔は狼の糞を乾燥して燃やしたことからきているそうです。

昨年まで狼煙を上げる方法は発煙筒を用いてきました。実際経験すると、狼煙の煙は遠くから見えにくく、「今挙げました」と携帯電話で連絡しているのが実態です。

遠くからよく見える狼煙を上げる方法がないのか、今年はもう少し工夫してみたい。狼煙を上げる器具を作って試してみることにしました。

狼煙上げの器具に望む仕様は下記の様なことです。

  • 運搬が楽
    山の頂上まで運ばなければなりませんから。
  • 安全
    山火事の恐れがないこと。
  • 環境に優しい
    地面を焦がしたりしない。
  • 後始末が簡単

焚火缶

ネットで検索していてyoutubeの動画で焚火缶という商品を知りました。


この商品は、20Lのペール缶と組み合わて使う焼却炉(焚き火台)の部品セットで、アマゾンでも売っています。

下のような部品と120φ30cmの煙突2本がセットになっている。

3種類6個の金具のセット。他に煙突が必要(アマゾンの販売ページより)

アマゾンの購入者評価から参考意見を挙げると

  • 野外料理や剪定した庭木を処分する焼却炉として使用できる
  • 木の葉や小枝は勢いよく燃えて煙も少ない。マキぐらいの木になるとなかなか…
    筆者注:太めの薪(まき)も縦に入れるとロケットストーブのような燃え方でよく燃え、火のもちが良い。逆に言うと焼却という意味では当然時間がかかります。
  • 全て燃え尽きる感じではなくオキができます。それを上手く使い切れるか
    筆者注:放置すると灰になります。
  • 放り込みすぎてしまうと煙が出るが、しばらくすると再びパワフルに燃える
  • 全てのパーツがペール缶に収納でき持ち運びに便利
  • 焚き火台でいう脚部がありません。直火禁止の場所ではブロック等で地面との距離をあけないと真下が丸焦げになるので注意が必要です
  • ロケットストーブと謳っているが、ロケットストーブの根本であるヒートライザーがない
    筆者注:強く同意します。ビデオに出てくる山本正太さんはロケットストーブの定義を乱しています。
  • 割りして値段が高い

(筆者注は実験後に追記)

構造は簡単でこのぐらいなら手作りできそうです。それでまずペール缶で狼煙上げ器を実験し、続いて焚火缶(もどき)を実験することにしました。

狼煙上げストーブの製作

まず狼煙上げするストーブですが、こちらは煙を出すことが目的です。焚火缶の遮蔽板がない状態を作り、燃焼実験してみることにします。

ペール缶の準備

ペール缶を用意します。私は近所のガソリンスタンドで蓋付きをもらってきました。

ペール缶の塗装を剥ぐ

耐熱塗装を試す目的もあり、塗装することにします。

耐熱塗装の場合、まず元の塗装を剥がす必要があります。私はバーナーを使って塗装を焼きました。下の写真の左が塗装を剥がしたところです。蓋も塗装を剥がしました。

ペール缶。左が塗装を剥がしたもの

蓋の加工

使用する煙突

煙突は商品の焚火缶では120φですが、薪ストーブを作るため買っておいた106φのものが手元にあるので、これを使います。

煙突穴の加工

煙突は蓋を加工して取り付けます。蓋を半分に切断し、下の図面の位置に、煙突を挿す穴を開けます。

 加工手順
  • 蓋を半分に切断
  • 煙突より一回り小さく穴を開ける
  • 切り込みを入れ、折り曲げて煙突が入る大きさにする
    折り曲げにより強化します

下のようになりました。残った半分の蓋(左側)はそのままです。

L字アングルで補強部材を作る

蓋は薄くてベコベコするので、Lアングルで強化します。

棚などに使うLアングルをホームセンターで買ってきました。ディスクグラインダーで切り、ペール缶に固定するため、両端を万力に挟んで折り曲げました。最後にヤスリで仕上げ、下のようにできました。

写真下側が加工したLアングル(直径の長さ)

加工したLアングル(半径の長さ)

 ペール缶に穴を開けて組み立て
下のようにL字金具をT字型に組んでビス・ナットで止め、ペール缶に孔を開けて、端を折り曲げたL字金具をビス・ナットで固定します。いずれもM6のビス・ナットを使いました。

写真を撮り忘れ、これはのろし駅伝に使用後のものです。

塗装

それぞれ耐熱塗装します。モノタロウの耐熱黒色塗料を使いました。

下は煙突側の蓋のみをつけた状態です。

残りの蓋も下のように塗装をしました。

事前燃焼実験

一応できたので狼煙を上げるのに使えるか、燃焼実験をしてみました。

煙突一本(長さ90cm)をつけて、木片を燃やしてみたら結構よく燃えます。煙はあまり出ません。

熾(オキ)がある状態で杉や松の生枝を入れると炎が消えて、くすぶる状態になります。この時かなり煙が出ます。これなら狼煙上げに使えそうです。

熾が少ないと消えてしまうので、本番は炭を使ってたくさん熾を作っておくのが良さそうです。

発煙材料は杉より松葉が煙が多く良いです。ヒノキも良いようなのですがすぐ手に入らないので、松で本番を行うことにしました。

耐熱塗装は高温で固着します。今回の燃焼では煙のようなガスが発生して固着したようですが、一部はめくれるように剥がれました。缶内部の剥げはありませんでしたので耐熱自体は問題ないようです。塗装時脱脂しなかったのが原因かな?と思いました。

狼煙を上げる

11月23日のろし駅伝において狼煙上げに使用しました。

用意したもの
  • 狼煙上げストーブ
  • 水を入れた2Lペットボトル2本(緊急消化用)
  • ロープ
  • 煙突 6本
  • 二つ割り(煙突に巻く金具)
  • 台に使うペール缶(小物入れ)
  • ロープ(紐)
  • 針金
  • ペグ(テント用)と木槌
  • 革手袋
  • ハソミ
  • バーナー
  • 木片
  • 松の生葉(小枝)
運搬

次の3種5個にまとめて持ち、山に登りました。

  • 本体
  • 別のペール缶
    中に小物を入れて運搬
  • 煙突
    6本を2本づつ束ねて紐でくくり、運搬
設置

下のようにして設置しました。

  • 本体のペール缶の下にもう一つのペール缶を台にして置く
  • 煙突に二つ割りを取り付ける
  • 二つ割りに長さ1mぐらいの針金3本を結ぶ
  • 針金の先に紐をつなぎ、3方から支える
  • 煙突を下から継ぎ足していき、計6本になったらストーブの穴に入れる
  • 地面に打ち込んだペグに紐を結び、倒れないよう固定する
着火

炭を缶の底に置き、その上に木片を置いて着火しました。

ところが持っていった木材の乾燥が不十分だったようでなかなか火の勢いが上がりません。時間がかかりましたが、なんとか火の勢いが出たところで、生の松葉を投入しました。こうして事前実験どおり、下のように煙を出すことができました。

のろしを上げている様子

 今回は行事予定の関係で終了後すぐ撤去しましたが、このあと焚火缶として暖をとったり、料理に使うことができますね。来年の楽しみです。

焚き火缶(もどき)にステップアップ

その後放置していて2月になってしまいましたが、遮蔽板を追加して、本来の焚火缶もどきを作ります。

遮蔽板を作る

焚火缶にするため遮蔽板を作ります。

焚火缶のビデオを見ると鉄板に切り込みを入れただけのものですが、現物や設計図面がないので正確な寸法はわかりません。こんなもんじゃろと下のようにサイズを決めました。

なお、後でわかったことですが、販売品に比べ蓋の位置が低いので、全長(282mm)をその分(6~10mm)ほど短くしたほうが良かったです。

材料の入手

遮蔽版に使う厚さ2mmの鉄板はヤフオクで購入しました。希望のサイズに切ってもらえるのがありがたいです。上記外形サイズで注文して入手後、切り込み部分だけ自分で加工すれば良いのです。

準備加工

入手した鉄板は切断したままで端が尖っていて危ないので、まずベルトサンダーでエッジや角を丸めました

スリットの加工

2mm幅の切り込みスリットを加工します。刃幅が2mmの金属切断用の刃を

用いたのですが、実際の加工後の幅は約3mmありました。


できた2枚を組み合わせて見るとその全長が長すぎました。蓋が落ち込んでいる部分を考慮し忘れていたのです。

今回は当初78mmで設計していたスリットの長さを84mmまで長くして対応しましたが、本来は全長(252mm)を短くすべきでした。

孔開け

Lアングルにネジ止めするための6.2φの孔をボール盤で開けます。必要なのは片方なので一枚だけに開けました。

取り付け

下写真の様にLアングルにM6のビス・ナットでネジ止めしました。下側の板は上の板で支えられるだけです。

煙突側の蓋も取り付けると下のようになります。

構造的には、煙突の吸込口を下まで延長した感じですかね。右上の隙間がどう影響するのかわかりませんが。

再塗装

狼煙揚げに使ったときに塗装が禿げているので再塗装しました。

再塗装した焚火缶(もどき)

  • 禿げた部分をペーパーで処理
  • 脱脂(シリコンオフ)
    手元に定番のシリコンオフがなかったので、代替品としてキャンプに使うホワイトガソリンを用いました。
  • 塗装
    最初と同じモノタロウの耐熱黒色塗料を使いました。

焚火缶(もどき)の火入れ

3月に入って暖かい日が続きましたが、6日になって気温が下がったので、下記動画のように火入れしました。煙突は106φ、長さ90cmです。


ダンボールと端材を入れ、バーナーで簡単に着火しました。

煙突から煙はほとんど見えません。後半のように燃料を多くして燃焼が大きくなると、煙突上部から炎が出てくるようになります。

塗装

塗装の剥がれ

着火後暫くして缶の温度が上昇してくると缶周辺に煙のようなものが見えますが、耐熱塗料の焼付で出るガスです。

冷えてから見ると右のようにまた一部剥がれていました。

この塗料剥がれの原因としては

  • 急激な温度上昇
  • 油脂分等の付着
  • 一度に厚塗りし過ぎ
  • ペーパーで表面処理が必要

などが考えられますが、今後究明していきます。

燃焼試験の結果

焚火缶は簡単な構造のわりに煙が出ず、燃焼後もそのまま放置できるので後始末が楽です。ですので安心して剪定屑などの焼却に使えますし、庭で暖をとったり、五徳を工夫すれば料理もできるなど、屋外で色々と使えそうです。

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

トップへ戻る